棟上げと餅まき

私の通う事務所は住宅街の中にあるのですが、通勤途中に新築工事の住宅をよく見かけます。今風に2×4とかだと、あっという間に建ってしまうので、びっくりしてしまいます。少し、寂しいのが見かけるのが業者さんばっかりで、単なる工事しか見かけないからです。

私が小さい頃は「家を建てる」というのは大事業で、家の骨格が出来上がるのに合わせて「上棟式」を行い、その後に地域の人に向けて「餅まき」をやっていました。「餅まき」とは何ぞや、と思われるかもしれませんが、ひと昔前は建築工事で近隣にご迷惑をかけるお詫びと、新築の目出度さをおすそ分けする私的な行事として、どの地域でも一般的に行われていました。

最近、あまりみかけなくなったのは、地域内のコミュニティの形態が変わってきたことや、建築工法の変化が原因なのかもしれません。周辺に木の臭いが溢れる中で、屋根の上に上がった大工さんや施主の家族が、小さなお餅や赤い布の付いた5円玉が入った袋を撒く姿は「日本の文化」を感じさせます。

近所のおばさん連中が割烹着の前を袋状に広げて右往左往し、小学生と思しき少年はグローブを伸ばして小袋を獲得しようとします。「福」の御裾分けの風景はのどやかなものです。

地方だと餅まきが終了した後は、施主の心遣いで建てかけの屋内で酒宴が開かれるのが通例です。ご近所も招かれて賑やかに行われます、昔は棟上げなどの大きな労力が必要な時には、その地区の住人が協力するのがあたり前でした。

ハリソンフォードが大工だった話は有名ですが、1985年に主演した「刑事ジョン・ブック 目撃者」ではアーミッシュの集落で共同生活を送る話が出てきます。その中で、新しく家を建てるために近隣の人々が集まり、協力するシーンがあります。まったく、日本の棟上げの風景とかわりません。

居住地域で個人が主催するイベントといったものは、なくなりつつあるのかもしれません、子供が進学や結婚をしたからと言って、ご近所の問題ではないのですから。しかし、自分たちの小さな福を同じ地域の人たちに分け与えたいという気持ちが日本人的なのではないでしょうか。

 

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