「鹿の惑星」その③ 第三次接近遭遇 ”捕獲”

好評をいただいております鹿シリーズもクライマックスが近づいております。先回までの振り返りです①第1次接近遭遇:遠足のとき、遠くで鹿の姿を見た。②第2次接近遭遇:父がトラックで鹿を轢こうとして失敗。今回はかなり時間が経過して、私が成人して実家を出た後の話になります。

現在もそうなのですが、実家では家族で田舎料理を提供する店を経営していました。店は実家から4㎞ほど離れた場所にあり、山と川の風景が見られる以外は民家もない、まったくの一軒家です。私も帰省すると、皿洗いなどで手伝いをやっていました。

季節的には夏前だったと思うのですが、久しぶりに帰省すると母から意外な話が出ました「店の前で小鹿ば捕まえたったい。暇やったら店の倉庫におるけん見てきてん」どうやら、店の前の畑で小鹿を捕まえて店舗の倉庫に入れてあるらしいのです。

面白そうだったので軽トラを飛ばして見に行ってみました。倉庫のシャッターを上げると、中の柱にピッタリ顔を付けて小鹿が立っていました。犬用の首輪とリードを付けられていたのですが、柱をぐるぐる回って、動けなくなったようです。あきらめたのか大人しくしていましたが、その目の大きくてカワイイらしいこと。しばらく眺めて、動けるようにリードをほどき実家に戻りました。

帰って母に話を聞くと、兄が夜に店の仕込みをしていると、激しく犬が鳴くので畑の方まで出てみると、犬に追われた子鹿が疲れてうずくまっていたそうです。兄はそのまま子鹿を抱きかかえて倉庫に連れていって首輪とリードをしたのです。母の説明によると、兄は小屋を作って鹿を飼うつもりのようです。

その夜、久しぶりに父に会うと「小鹿ば見たか?お前、明日おるっちやったら、いっしょに食おう」どうやら、私をダシに鹿を食べようとしています。翌朝、早くに父は店に出ていきました。ごはんを食べずにキャラメルコーンばかり食べる心優しい兄の保護案も聞き入れず、父の頭は鹿肉でいっぱいだったのです。

昼前に実家に戻った父は「目がカワイかね」とだけ言い残し、食材の仕入れに出かけていきました。どうやら食べようと思って倉庫までは行ったようですが、小鹿のカワイイ目を見て「肉」にするのは止めたようでした。

それからしばらくして母から連絡が来ました。兄が時間が取れず、小屋を作ることが出来なったため小鹿は逃がしてあげたようです。母は続けます「そしたらくさ、店の前の畑の野菜ば全部食うて逃げたったい。」恩返しはありませんでした。次回は… 第四次接近遭遇 ”侵略”、最終回でーす。

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