雨の日はカニが大漁だったあの頃、国道は未舗装だった

私がまだ小さかった頃、国道は舗装されておらず、雨が降るとあちらこちらに小さな水路ができるような状態でした。今では、どこにいっても舗装されていない国道なんて見かけることはありませんが、当時はまだ未舗装の区間があったのです。時折テレビで見かけるカンボジアの未舗装の悪路は昔を思い起こさせます。そんな道なのですが悪いことばかりではありませんでした、雨が降ると小さな沢蟹が群れをなして国道を移動していくのです。

私や家族は雨の中、車の通らない国道で沢蟹を取り続けます。とにかく拾ってバケツに入れれば良いのですから、どんどんと溜まっていきます。子供にはちょと大きなバケツいっぱいに5㎝ほどの蟹がひしめくのです。当然、蟹が取れた日は蟹を食べます。メスはお腹の蓋のようなものをはがして、オスはそのまま素揚げします。もともと沢蟹は赤茶けた色なのですが、揚げるとさらに鮮明な赤色に近づきます。

食卓の大皿の上には、うず高く沢蟹のから揚げが積み上げられ、家族四人でそれをポリポリ言わせながら食べます。「ポリポリ」「ポリポリ」「ポリポリ」ひたすらに「ポリポリ」です。カニ道楽のカニのように大きくて、中の身をほじって食べるわけではなく、丸ごと食べるのでものすごい数を食べることになります。一人で数十匹は食べたと思います。

今なら高級料亭で皿の端に松の葉といっしょに一匹、二匹付いてものすごい料金を取られると聞いたことがあります。思い返すと、嫌になるほど蟹を食べたのも、そう長い期間ではありませんでした。国道は舗装され、山から流れてくる小川の水量も減り、山の中まで小川を辿って蟹を探しても見つからなくなってしまいました。

蟹しかおかずがなかったあの頃は、「ポリポリ」するのは嫌いでしたが、今になって食べてみたい気がします。江戸の昔、マグロの赤身は軽視され好んで食されることはなかったと聞きます。今となっては嘘のような話ですが、その時々に存在した食材がずっと残っていくとは限りません、今食べることのできる食材に感謝。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA