アボリジニみたいな祖父が大好きでした そのⅠ

私の祖父の家は県の文化財指定を受けられるくらい古い建物でした。もちろん指定など祖父は断っていました「自分の家ば、自分の好きにせんでどげんするとか」と笑っていました。祖父が住んでいたのは、たった3軒しか人家のない地区で、夜になると周辺は真っ暗になるようなところでした。私が住んでいた村からは歩いて4kmほどかかりました。

私はこの祖父が大好きで週末には必ず泊まりに行っていました。祖父は両親が知らない特別なことをいろいろと教えてくれました。川沿いの雑木林に行くとニッキの味のする木やトリモチの木を教えてくれました。ニッキは、肉系=ニクケイ=ニッキ、樹皮を削って食べるとシナモンのような味のする木です。

トリモチの木も樹皮を削って使うのは同じなのですが、その樹皮を川端の大きな石の上で小さな石を使ってすりつぶしていくのです、だんだんと粘りが出てきて、表皮の硬い屑のような部分を洗い流していくと、非常に粘着力の強いゲル状になります。ビニール袋に手を入れて掴まないと、手に付いて取れなくなってしまいます。

このトリモチを梅の木などの枝に塗り付けるのです。そうすると、メジロなどの鳥がトリモチの上に止まって動くことが出来なくなるのです。その動けなくなった状態で鳥を捕獲します、冗談のようですがこの方法で鶯を数羽捕まえました。

トリモチは漢字で鳥黐と書きます食用の餅が出来るまではモチと言えばこの鳥黐を指していました。食用の餅が普及してからは、鶏取黐などの名称で呼ばれ区別されるようになりました。日本各地、それぞれの地方で使う材料は違います。樹皮を使う地方もあれば木の実を使う地方もあります。

また、冬には魚を捕りに連れていってくれました。漁に行く日は氷が張るくらい寒い日でなければなりません、祖父は大型のハンマーと魚を入れるタモを持って行きます。私は小さかったので川縁で待っているのですが、祖父はひざ丈くらいの川に入り水面上に出ている大きな石をハンマーで叩きます。

二度も叩くと、石の下から魚が浮かんで来るので、それをタモですくいます。魚はハンマーの衝撃で脳震盪を起こすのです。川縁で待つのは寒かったのですが、石の下から浮かびあがってくる魚を見るのはワクワクしました。

とにかくいろんなことを教えてもらい、見せてくれました。その中でも捕って食べるとということでは虫が強烈でした。春先にたき火をしているときでした、クヌギの倒木だったと思いますが「この中に虫のおるったい」と言って樹皮をめって、茶色の細い何かの幼虫を数匹捕りました。

祖父はその虫をたき火の端で炙って食べさせてくれました。祖父は「この虫しか食べられんとたい。うまかろうが」と言いながら自分も虫をほおばっていました。確かに表皮はカリカリでおいしかった記憶があります。しかし、この時以外に昆虫を食べた経験はありません。

オーストライアに行ったときにアボリジニ(原住民)の人に蟻の成長を食べるように薦められたことがあります。もっとも、丁重にお断りしましたが。思うに祖父はアボリジニのような人でした。自然から生活の糧を得る生活を実践していたのですから、できれば祖父が焼いた茶色の幼虫をもう一度食べてみたい気がします。

 

 

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