ロングビーチで泳ぐ

これも古い話なのですが、20年くらい前に会社の上司とロサンジェルスに出張したことがあります。出張といっても視察業務だったので、2日ほどで仕事は終わって、残り数日を観光で使えることになりました。随行した上司は体育会系の出身で、気さくで明るい方でした。好奇心も旺盛で、いろんな場所に誘ってもらいました。その上司から「せっかく来たのだからビーチで泳ごう」と言われ、ビーチに行ったときの話です。

最初、ふたりでショッピングモールに買いものに行きました。おあれやこれや買ってしまい、まるでショッピング目的にロスに来た日本人のようになっていました。買い物を終えて外に出ようとしたとき「買い忘れ」と言って上司は店内に戻っていきました。私はレジ外で大量の買い物持って待っていました。出てきた上司は、何やら紙袋を抱えて満足そうでした。

表に出ると「泳ぎに行くぜ」といいます。ふたりとも両手に大きな紙袋「いいっすけど、海パン持ってませんよ」「さっき、俺が買うてきた」そうです、最後に買いに戻ったのは海パンだったのです。思わず笑ってしまいましたが、そのままタクシーを拾って海岸に行くことにしました。タクシーはショッピングセンターの敷地内ですぐにつかまりました。

乗り込んでびっくりしたのですが、運転手はごつい黒人で助手席に小さな子供を乗せています。「ビーチ」「スイム」「ゴー」上司は満面の笑顔で海岸へ行きたいことを伝えようとしています。運転手はニコリともせずに身振り手振りを見ていましたが「OK」、走り出しました。後部座席の両側の窓が開いたままハイウエイに乗ります、ものすごい風圧で私たちの顔はゴム人形のようになっていました。

「ヘイ!プリーズ、クローズ、サイド、ウインドゥ」大声で窓を閉めるように何度も言うのですが、とにかく風圧がすごいのです「ブロークン!」窓は壊れて上がらないと言っいるようでした。上司と、大丈夫だろうかと話をするのですが風圧で声は聞こえないし、髪はオールバックになり、顔は協力ドライヤー吹き付けたようになっています。

30分くらい、その状態で走って海岸につきました。砂浜のビーチで地元の人たちが日光浴をしています。私は黒人の運転手に料金+チップを渡し3時間後に同じ場所に戻るように頼みました。彼はニコリともせず「OK」助手席の息子は笑っていました3歳くらいに見えました。

上司が買ってきたハデハデの海パンを履いてふたりで泳ぎました。ヒスパニック系の地元の人たちが大勢いましたが、誰も海には入ってはいませんでした。水はつめたかったのですが、私たちは買い物した荷物を砂浜に置いたまま大はしゃぎでした。ひとしきり遊んで、約束通りタクシーも迎えに来て、再び風圧に耐えながら市内へ向けて戻りました。

帰国の際、帰りの便が遅れて空港のカフェで時間を潰しているときでした、隣にいたキャビンアテンダントと思しき女性が声をかけてきます。「いい色ですね」私たちはいい焼き色になってました「ええ、海で泳いだんです」「海?」怪訝そうな顔をします「このへんで海で泳ぐのは移民系の人たちくらいですよ。みんなプールでしか泳ぎません」上司と私は顔を見合わせました。そう言えば、海岸に白人は見当たらず海ではしゃぐ私たちを変な目で見ていたことを、知らないということは幸いであることを痛感した出張でした。

 

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