上京物語 1 「吉原に連れていっちゃってん」

最初に仕事で東京に出てきたのは20代の後半だったので約30年近く前になると思います。同じ時期に高校の同期が東京のコンピューターソフトの会社に転職して、二人とも千葉よりの地域に住みました、私は松戸、彼は幕張と内陸と海側で行き来が難しい地域に暮らしていました。しかし友達も少なく酒をいっしょに飲める相手もいなかったので、彼は足蹴く松戸まで通ってきていました。

週末のある日「お前、吉原に行ったことがあるや?」と彼が尋ねます。もちろん名前は知っていましたが、実際に現地に行ったことはありませんでした。彼は「なあ、吉原に連れていっちゃってん」と言うのです、私も東京都内は不案内ですし、ましてや吉原などという「風俗」のメッカ的なとこなど知ろうはずもありません。

彼が言うには別に風俗店に行ってみたいわけではなく、時代劇で馴れ親しんできた「吉原」という地を昼間でいいから一度見てみたいというのです。そう言われれば、興味がないわけでもありません、頭の中では何やら鳥居的な門をくぐり、遊郭の前まで行くと着物におしろいのお姉さんがルーバーのような木枠の間から手招きして…そんなわけないか。

とりあえず行ってみることになりました。しかし、まったく土地勘がないうえに「ヨシワラハドコ?」と外人を装うにはドメスチックな日本人でありすぎるため、誰かに道を尋ねるわけにも行かず。上野の本屋で地図で「吉原」を探しました。当時、地名として私たちが確認できたのは「吉原公園」「吉原NTT」の2ヶ所だけでした。私たちは地図を購入して、その吉原の名が付く地区へ歩きました。

けっこうな時間歩いたと思います。目的のエリアに着くと確かに風俗店らしきビルがいくつか目に付きました。昼間見たせいもあったのでしょうが私と友人の目からは「なんや、これが吉原や」「想像とじぇんじぇん違う」感じでした。私たちは日本三大歓楽街のひとつ「中州」を見て過ごしてきたため、こういうエリアは東南アジア的にグシャと多くが集まってワイワイとしたイメージがあったのですが、少々がっかりしてしまいました。

友人と帰りに上野で飲んで帰りました。彼が言うのです「俺たちの思う世界は、ここにはなかとぜ!」と茹でて冷やした豚足をいじっていました。さらに「なぜ?豚足を焼かん!」とひとり事を言ったのが印象的でした。彼は今、福岡で元気に暮らしています。

 

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