蛍を蚊帳の中で飛ばして星空を作る

初夏になると蛍を思い出します。私の育った山村には大きな川はなかったのですが、川幅3~4m程度の小さな川があちら、こちらにあり、ちょうど今くらいの季節には蛍が飛び交うのです。人の少ない山村のことですから街灯などはほとんどなく、月や星の出ない夜は「真っ暗」でした。小さな川の周辺を夕方から蛍は飛び回り夜の時間帯になると山の方に飛び去って行くのです。

子供の事ですから、小さな頃は蛍を捕まえることが楽しみでした。店に捕虫網が売っているような時代ではありませんでしたので、細い竹を切り出して3mくらいの竿を作って、その先端に笹や杉の葉をくくり付けるのです。飛んでいる蛍の近くにこの竹竿の先を突き出すと、蛍がそこに止まって捕まえることができます。まあ、止まるのを待つと言うより無理やり先端に追い込む感じだったのですが。

捕まえた蛍は家に持って帰り蚊帳の中で放します。蚊帳の天井部に止まって星空のようになればいいと思ってそうするのですが、そこは生き物なのでなかなか思ったようにはいきません、蚊帳の中を飛ぶ蛍はあまり風情のあるものではありませんでした。次の日には集めて虫かごに入れるのですが半数近くは死んでいました。蛍の餌は草に着く”露”だと言われていたので、蛍草と呼ばれる草に霧吹きで水をかけて虫かごに入れてやります。しかし、蛍が露で生きているというのは、海に人魚が住むのと同義でまったくの通説にすぎません、可哀そうなことにかごの蛍も長くは生きませんでした。

小川の周辺を無数に飛ぶ蛍の姿は言葉にできないくらい美しいものです。子供の独占欲で狭いところに閉じ込め、寿命を縮めたことは都度、反省させられました。聞くところによると川が汚れて年々、蛍を見れる場所も減っているそうです。考えてみれば、もう40年以上は小川の周辺を飛び交う蛍の姿を見たことはありません、考えても見てください電気の力でもなく小さな虫の光るお腹が夜の闇を明るくするのです。できれば、もう一度川面を照らす蛍の群れなす姿を見てみたいものです。

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