ゴビンダさん来日で思い出される「東電OL殺人事件」の記憶、そして今も未解決の闇。

引用 朝日新聞デジタル

「東電OL殺人事件」というのは、1997年3月9日未明に東京電力の幹部社員だった女性が、渋谷区丸山町にあるアパートで殺害された未解決事件です。ネパール人被疑者(ゴビンダ・プラサド・マイナリ)が犯人として逮捕・有罪判決を受け、横浜刑務所に収監されましたが、後に冤罪と認定され債務所から釈放され、無罪判決を得ることになります。2012年に無罪が確定したゴビンダ氏でしたが入管難民法違反(不法残留)が確定していたため、国外強制退去処分を受けて、2012年6月15日成田国際空港からタイ・バンコク行旅客機で日本を出国して、ネパールに帰国しました。

15年の拘束の後に国外退去となり5年が過ぎ、再審が決定して以降初めての来日となるビゴンダ氏。今回の来日はビゴンダ氏の支援活動を行ってきた「無実のビゴンダさんを支える会」(解散)のメンバーらが新たに立ち上げた市民団体「なくせ冤罪!市民評議会」の招きによるものです。11月9日に開かれた市民集会ではビゴンダさんが妻のラダさんと共に出席「二度と同じような(冤罪)痛ましいことが起こらないことを願う」と語りました。

ビゴンダ氏はマスコミの取材に対し「今も深く眠れない、いやな夢を見る」と話し、「お前が殺した」「犯人はお前だ」と大声で追及され「本当のことを言え」と迫られた当時を語りました。ビゴンダさんが国を離れ観光ビザで日本にやってきたのは、2人の娘が2歳と6か月の頃でした。その娘さんたちは、自由の身になって5年前に帰国した時には20歳と18歳になっていました。ビゴンダさんは娘さんたちの成長を見守ることができなかったことを悔やんでいました。ネパールで暮らしていた家族も大変な苦労があったようです。

そもそも「東電OL殺人事件」ってどんな事件だったのか?

■事件概要
事件発生から10日後の1997年3月19日午後5時過ぎに、東京都渋谷区円山町にあるアパートの1階空室で、東京電力本店に勤務する女性(39)の遺体が発見されました。発見者はこのアパートのオーナーが経営するネパール料理店の店長でした。後に被告人となる第一発見者のビゴンダ・プラサド・マイナリ(30)はアパート隣のビル4階に他の不法滞在ネパール人4名と住んでいました。また被害者が生前に売春していた相手の一人でもありました。死因は絞殺で、死亡推定日時は同日8日深夜から翌9日未明にかけてとされました。5月20日、警視庁は近隣に住み不法滞在していたビゴンダ氏を殺人事件の実行犯として強盗殺人容疑で逮捕しました。

■被害者女性
この事件が当時大きな話題となったのは被害者女性の背景が特殊だったことが上げられます。被害女性は慶応大学経済学部を卒業した後、東京電力に初の女性総合職として入社したエリート社員だったのです。驚かされたのは、後の捜査で被害女性が退勤後は円山町付近の路上で売春を行っていたことが判明したからです。被害者は昼は大企業の幹部社員、夜は娼婦と全く別の顔を持っていたことがマスコミの取材によって明らかにされていきます。その内容が衝撃的であったため被害者や家族のプライバシーに関し、議論が沸騰しました。

被害女性の背景や売春の実態に関してはノンフィクション作家の佐野眞一氏の著「東電OL殺人事件」を読んでいただきたいと思います。私も当時読ませていただきました「アドレナリンが分泌される事件」と佐野氏が表現していたことが記憶に残っています。被害女性が東電という大企業で女性初の総合職としてストレスを溜めていたであろうこと、そのためか、夜は相手を選ばず不特定多数の相手と性行為を繰り返していたこと。また、円山町界隈で娼婦として活動する際の奇行(数百円で売春を行い、駐車場など場所にも頓着しなかった)なども書かれています。この事件は被害女性の特殊性のためか、様々な分野でメディアに取り上げられました。園子温監督の「恋の罪」などもそのひとつです。

■真犯人
話題を集め、冤罪まで生み出した事件ですが”真犯人”はまだ見つかっていません。『未解決事件』となってしまったのです。今回、来日したビゴンダ氏は殺害された女性の遺体があった部屋に残されたコンドームの精液がDNAが一致したため犯人として疑われました。しかし、女性の体内からは別のDNAの精液が見つかっており、身元が特定されない陰毛も発見されていました。これらの証拠が現場に「第3の容疑者X」がいた可能性を示唆するものとなりビゴンダさんは無罪となったのです。

では犯人はどうなったのでしょう?事件後、支援団体による目撃者探しが行われ、いろんな形でビゴンダ氏以外で事件当日に被害者といた人間が探されました。中でも巣鴨で発見された定期券は新容疑者発見への糸口とされました、被害者の定期券が巣鴨の民家から発見され、巣鴨に関連した人間が容疑者として浮かび上がります、丸山町で被害者の客のひとりであった男が巣鴨に居住していたのです。この男をはじめ、アパートのオーナーや他の買春客が容疑者として疑われますが、結局は特定できずに今日に至ります。周辺で捜査協力していた飲食店の店主の方達も高齢となり、亡くなられる方が増え、だんだんと事件は風化しようとしています。

■神泉
今般、ビゴンダ氏が来日した事は事件を再認識する機会となるかもしれません。事件は暗い闇の中にありますが、何かのきっかけで真犯人が見つかることを祈っております。渋谷から一駅の『神泉』駅のすぐ近くに犯行現場となったアパートがあります、事件当時、私はそのアパートを訪ねたことがあります。渋谷から坂を上って被害者が客引きをしていたであろうエリアを抜けて、歩いて神泉駅からすぐのアパートを見に行きました。「東電OL殺人事件」を書いた佐野氏が被害者の抱えた闇に迫ろうとしますが、なぜ被害者がこの丸山で娼婦となったのかは分かりませんでした。彼女の抱えた闇が事件を招いたのかも知れません。私にとっては感慨深い事件でした。

 

 

 

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