是枝裕和監督の視点が泣ける「万引き家族」は「誰も知らない」を思い起こさせる。

引用映画.com

フランスの南部、カンヌで開催された第71回カンヌ国際映画祭は5月19日夜、日本の是枝裕和監督の「万引き家族」に最優秀賞の“パルムドール”の栄冠を与え、閉幕しました。日本映画が最高賞を受賞するのは1997年公開、今村昌平監督の「うなぎ」が受賞して以来、21年ぶりの快挙となります。少し前から6月公開に向けての予告編などが公開されていました。私はこの数分の予告編を見ただけで涙を抑えることができなくなりました、夜の帰り道で主人公の男と息子がマンションの廊下で震えていた女の子に声をかける「コロッケ食べる?」この数秒のシーンだけで涙腺が崩壊してしまいます。是枝監督の作品は『家族』をテーマに描いたものが多く、初期に見た「誰も知らない」のイメージが強烈に残っていて、私的には今回作品に「誰も知らない」と同じトーンを予告から感じてしまうのです。

是枝監督は15年の構想の末「誰も知らない」を世に送り出した。

■物語は実際の事件を題材に作られた

「誰も知らない」は1988年に発生した巣鴨子供置き去り事件を題材として、是枝監督が15年の構想の末、映像化した作品です。この事件は、父親の蒸発後に母親が4人の子供をアパートに置き去りにし、保護責任者遺棄の罪に問われた事件です。母親は金銭的な援助を行い、時折様子を見にアパートに戻っていましたが、実質的には育児放棄状態であり、幼い兄妹の世話は推定15歳の長男がしていました。後に世間を驚かせるのは、この子供たちの出生届は出されておらず、その存在は「誰も知らない」状態だったのです。

■映画が訴える家族の“絆”

ドキュメンタリーを手掛けていた是枝監督が成せる技だと思いますが、同映画は記録映画のように進行していきます。取り残される子供たち、腹を空かせた幼い兄妹にコンビニのジャンクフードを与える長男、やがて友達のために兄妹の世話を疎かにする長兄、泣くことで邪魔者にされ死に追いやられる乳児、死んだ弟を埋めに行く長男、淡々と物語は進行していくのですが、あまりの悲惨さに固まってしまいます。取り残され、幼い兄妹の世話をしていた長兄の生活がリアルに描かれた本作では、主演を演じた柳楽優弥さんが第57回カンヌ国際映画祭で最年少かつ、日本人で初めての最優秀男優賞を受賞しました。実際の事件では母親が逮捕され「懲役3年、執行猶予4年」の有罪判決が出ています、また、事件後に長女と次女は母親が引き取りましたが、長男に関しては消息が不明とされています。

「誰も知らない」から14年、「万引き家族」が公開される

■構想から10年、本作も実際にあった事件が題材となっている

是枝監督はドキュメンタリー制作の仕事から一般映画に来られた方なので、現実的な事件にインスパイアされて作品を作ることが多いのかもしれません。今回、万引き家族のベースとなっているのは「死亡届を出さずに年金を不正にもらい続ける家族」なのです。昨年から今年にかけてでも不正受給に絡んだ事件は多発しています、母親の死亡を隠して年金の受け取りをしていた息子、両親が死亡していたにも関わらず50年以上にわたって年金を不正受給していた事例もあります。ほとんどの事例が「生活費の足し」と、その動機を語っています。そうでもしなければ“生活費”が得られない状態にある、そして足りない部分を埋める方法はいろいろなのですが、今回は『万引き』という犯罪を加えることによって、社会から浮いた、この家族の立ち位置を引き立たせています。

■是枝節の真骨頂『家族』そして『絆』

これまでにも様々な形態の家族を描いてきた是枝監督ですが、やはり「誰も知らない」で描いた家族、社会といったものに原点があると思います。社会的には不自然な形態であっても血の繋がった「家族」というものは存在し、お互いを助けながら生きている。それに対して、周辺の社会(見ている我々)はどう考え、対応しているのかを問われているのを感じるのです。今回は年金を不正受給し、それでは足りない分を万引きという『犯罪』で補って生活する“家族”の話です。社会的に認められない行為をしていることが絆を深め、家族という意識を高めるのだと思います、そこに虐待された血のつながりのない女の子を加えることによって“血の繋がり”“家族の在り方”が問われのです。公開は6月8日、まだ見てもいないのですが、是枝節全開の映画だと期待しています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA