
引用 ニッケイ
有料老人ホーム「サニーライフ北品川」で入所者の男性(82歳)が殺害された事件で、殺人容疑で逮捕された施設の元介護職員根本智紀容疑者が男性を繰り返し居室に引きずり込み、その後1人で立ち去る様子が防犯カメラに映っていたことが、捜査関係者への取材で明らかになりました。警視庁は立ち去る直前に暴行が行われたとみて、事件に至る経緯を詳しく調べています。施設内の防犯カメラに映っていた82歳の男性を根本容疑者が引きずり込む映像は3日午後10時過ぎに記録されたもので、管理会社である川島コーポレーションは映像確認の後、このような行為は虐待に当たるとして4月10日に根本容疑者を解雇していました。
監視カメラには被害者を引きずる根本容疑者が映っていた
■引きずる行為は虐待
根本容疑者は夜勤だった4月3~4日、黒沢喜八郎さんの居室で黒沢さんを暴行して殺害したとして5月22日に逮捕されました。「暴行したことはない」と根本容疑者は否定しています。黒沢さんは肋骨の背中側が4カ所折れ、内臓も損傷していました。捜査関係者によると暴行の程度は3階の高さからの転落や交通事故に相当するといいます。黒沢さんは認知症でした。居室から出て行くことは以前もあり、右半身が不自由で、はうような状態になるといいます。施設の担当者は「車いすに乗せるなどするのが通常の対応。引きずるのは虐待だ」としています。この引きずり行為の直前に根本容疑者は暴行を行ったと推察さており、映像には男性の居室から出て来て、おどけるように肩をすくめる根本容疑者の姿も映されていました。
勤務先の有料老人ホーム「サニーライフ北品川」(東京都品川区)で、入所者の黒沢喜八郎さん(82)=品川区=を暴行して殺害したとして、警視庁は22日、元介護職員の根本智紀容疑者(28)=東京都新宿区=を殺人の疑いで逮捕し、発表した。 https://t.co/GpcVzNj9eJ
— 朝日新聞名古屋編集局 (@asahi_nagoya) 2019年5月22日
■事件前に暴行行為などの前例はない
黒沢さんは4月4日午前1時40分ごろ。119番通報で病院に搬送され、翌5日午前6時過ぎに死亡しました。同施設を運営する川島コーポレーションによると、根本容疑者は5月3~4日に責任者として当直勤務についていました。同社によると根本容疑者は2014年に入社し、介護福祉士の資格も取得していたといいます。事件後、根本容疑者に関しては元ホストだとか、ギャンブル狂いだったとか、いろんな情報が流布していますが、過去に暴力事件を起こしたことなどはなく、事件発生前から特別に問題があったわけではありません。しかし、死に至るまでの暴行を加える原因がどこにあったかは、現時点では明確にはなっていません。
要介護が増える社会では、事件を起こさせない施策が必要
■被害者は安心して専門スタッフに任せたつもり
黒沢さんの次女によると、黒沢さんは群馬県の出身で、上京後、20代で結婚しました。その後は、夫婦で飲食店を切り盛りし、気さくな人柄で地域でも愛される存在だったといいます。妻が15年前に亡くなり、10年ほど前から認知症が進行していました。面倒を見てきた次女も癌を患い、治療に専念するために入所を決めました。次女は「施設に入れなければもう少し長生きできたし、痛い思いもしないで済んだ。申し訳ない気持ちでいっぱいだ」と涙を流しました。黒沢さんには老人ホームに行くほかには選択肢はなかったのです。最後の拠り所となったのは、介護の専門施設だったのです、その専門施設のスタッフが自身の命を縮めるなど、まったく考えたこともなかったでしょう。
東京・品川区の有料老人ホームに入居していた82歳の男性が死亡し、元職員が殺人の疑いで逮捕された事件で、男性は3階から転落した際に加わる力と同程度の衝撃を受けていたことが分かった。ろっ骨が少なくとも4か所で複雑に折れ、警視庁は強い力で暴行を加えたとみて捜査。https://t.co/HTz7p0PZcs
— NHK@首都圏 (@nhk_shutoken) 2019年5月23日
■社会全体で事件を起こさせない対応を
黒沢さんは死亡前に次女に「男に蹴られた」と話していました。次女の話では、いつもの話し方よりも“しっかり”とした口調で明瞭だったそうです。世話を見てくれると思っていた施設スタッフの裏切りに対する怒りが、最後の証言となったのかもしれません。根本容疑者の動機はわかっていませんが、介護の現場では需要が大きく人手が足りない状況が続いています。そんな中、介護スタッフは思考力や体力が衰えた老人を世話しなくてはなりません、頑固に言うことを聞かない人や、指示に歯向かう人もいます。その上、体重は老人とは言え30~40㎏はあり、簡単に抱え上げて移動させることなどできません。根本容疑者と黒沢さんの間にコミュニケーション上の問題があり、そのことが根本容疑の暴行の動機になった可能性もあります。確かに根本容疑者の介護スタッフとしての資質に疑問はありますが、どこの施設でも有能な介護士ばかりではありません。今回のような事件が起こったのは制度的なものが問題です、老人介護のための必要人員基準(基本的な基準は存在しても、現実に対応できていない)が確立しておらず、根本容疑者は抱える業務が多く、時間が少ない状態だったのではないでしょうか?業務に余裕があれば今回のような事件を起こさずに済んだのかもしれません。根本容疑者個人への責任追及も必要なことですが、彼が介護という仕事に“追い詰められて”なかったかどうかの検証も必要だと思われます。